ロバートG.ウィールの鳥猟犬の繁殖 
 (Published in The American Field Dec. 14th 1991 by ROBERT G. WEHLE)

ロバートG.ウィールの鳥猟犬の繁殖
Published in The American Field Dec. 14th 1991 by ROBERT G. WEHLE

1991年12月14日、アメリカのフィールドにロバートG.ウェールが投稿

「レイ・ジェファーズがここハリスブルグで(エルフュー・ダンシング・ジプシーがちょうどスミスクライン・ビーチャム賞を獲得したところでした)トップ・シューティング・ドッグ・アワードのプレゼンテーションと関連してフィールドトライアル犬の繁殖について論文を発表する気がないかと私に尋ねました。
私は自分がそのような重要な課題研究に適任であるとは本当に感じていません。
しかし私は有名な「名誉の殿堂」入りしたホース・トレーナーのチャールズ ・ウィッティンガムのようになるつもりはありません。
しばらくの間彼のために働いてそして突然独力で非常に成功したあるトレーナーについてリポーターが彼に尋ねたときチャーリー・ウィッティンガムは「まあ彼が馬について知っていることは全て私が教えました」と言いそして目をキラキラさせて「…しかし私は自分が知っていることを全て彼に教えたわけではありません」と言いました。

まあしかし私は自分が鳥猟犬の繁殖について知っていることを全てあなたに伝え教えるつもりです。
そしていいですかそれはたいして長くはかからないでしょう。
もし繁殖について知らないことを話してよければそれはずっと長くかかるかもしれません。
これらの年月にも関わらずまだ重大な謎や大きな驚きがあります。
犬の繁殖はせいぜい不正確な科学です。
繁殖について私の何倍も知っている遺伝学者や動物ブリーダーがいます。
私が伝えようとしていることは私が数年にわたっておこなってきた観察結果です。」

繁殖の目的を確立する

繁殖プログラムを始めるにあたって最も重要なことは、目的あるいはスタンダードを確立することです。
最終的にどんなタイプの犬が希^.なのかを正確に知るために、最終結果を定義してください。そして、どんな理由であれ、そのスタンダードから逸脱しないでください。
プログラムに使う個体を選択する時は、感情に流されることなく冷酷になってください。
ルイ•パスツールは「チャンスは準備した心に味方する」と言いました。犬の繁殖の場合も同じです。チャンスは準備しているブリーダーに味方します。
現在のほとんどの重要な系統は、何世代にもわたる系統繁殖(ラインブリーデイング)、あるいは近親繁殖(インブリーデイング)の結果です。遺伝子銀行(遺伝子プール=優秀な血統)によって確立されました。
例えば、現在登録されているすベてのサラブレッドは、三頭のアラブ種牡馬の中の一頭の子孫です。また、テネシー •ウォーキング•ホースはメリー•ゴー•ボーイかミッドナイト•サン、あるいはそれを交配したものの直系の子孫です。
アメリカにおけるすべての重要な乳牛の血統も同様で、ダンロギン、カーネーション、パブスト・・・・・何世代も何世代もインブリードしてきた結果です。
二頭の全く無縁な動物の繁殖であるヘトロジーニアス•ブリーディングは、ビンで稲妻をとらえるような(偶然でも起こり得ないような非常に難しい)ものです。
とにかく何でも起こる可能性があります。もし、良い犬がこの繁殖の結果としてうまれたのなら、それは単に偶然にすぎません。
特にホモジーニアス•ブリーディングの場合、遺伝子銀行がしつかりと確立していれば、その結果はかなり信頼できます。
血統書には、子孫にいくらか直接の影響を及ぼす最所の二、三世代あるいは第四世代の犬が載っています。第五世代になると三十二頭です。
私の友人が繁殖プログラムを作るために、エルフュー•ハックルべリーの十世代の血統書を用意しました。手書きの血統書には四〇九四頭の犬の名前があります。その中にレキシントン・ジェークの名は二十回以上出現していたと思います。
さらに、繁殖プログラムに八世代を加え、十八世代にかかわつた犬は合計五十二万四千二百八十六頭になりました。興味深い数ですが、これはさほど重要ではありません。
私たちは、しばしば「牡系が重要だ」あるいは「牝系がより重要である」と耳にしますが牡系、牝系のいずれにも重要な系統があるように思います.
サラブレッドのネイティブ•ダンサーの牡系は、これまで四十年間続いています。最新のケンタッキー・ダービーとプリークネスステークスの優勝馬は、ネイティブ•ダンサー系の子孫あるいは支流になります。
ポインターではCH・ネルズ・ランブリング・オンが優れた雌系として知られています。
彼女はブルー・ヘン(青い雌鶏「どの様な雄を交配しても比較的良い子犬が生まれる」)と呼ばれ、その子犬達の中には信じ難いほどの偉大な犬が多くいます。
一方で、ワーフープ・ジェイク、CH・レッド・ウォーター・レックス、レキシントン・ジェイク、ガード・レールといった素晴らしい種牡の系統があります。特にガード・レールは、偉大な種雄の一頭であることに間違いありません。
奇妙なことですが、すべての種雄の系統が長く継続するわけではありません。数世代続く系統も有りますが、第一世代か、第二世代で中断してしまいます。
私たちがレキシントン・ジェイクで始めた系統は、エルフュー・ラッキー・ストライク、マークスマン、ジャングル、そしてハックルベリーを通して完成しました。しかし、次へのステップが求められました。
そこで、私たちはレッド・ウォーター・レックスを選び、全く新しい種雄の系統の確立を目指しました。その間には何度も何度もアウトクロスを試み、CH・フックス・バウンティー・ハンターと偶然出会いました。もう一つの偉大な種雄の系統を手に入れたのです。
繁殖用の種畜を選択して自分のスタンダードを準備する場合、どんなに良い系統の犬でも、重要な前提条件は知能です。知能に代わるものはありません。
知能の他に、ポイント能とバッキング能、粘り強さ、そして偉大な狩猟特性(hunting qualities)といった生来の特性があります。
これらの遺伝的な特質は、常に注意深い選択的な繁殖で強化し続けることが必要です。
体構で最も重要なのは、歩様です。何時間も何時間も、大きなエネルギーを費やすことなく走る事が出来る能力が必要で、当然、歩様は彼らに忍耐力を与えます。
尾も目も非常に重要です。尾は短くて真っすぐなミツバチの針か箒の柄のようなものが求められます。
目は様々な情報を持っていますので、目を見る事で、犬の性格を読むことができます。
他の重要な体構的特徴としては、一般的な外貌、足と脚(足は非常に重要です)、そして素晴らしい被毛があります。
そして、ポィンターの場合、誰もが素晴らしい頭部が大好きです。ポィンター種の大きな特徴の一つが彼らの美しい頭部です。

賞歴に惑わされない

たとえ、愛犬がナショナル•チャンピオンシップを獲得したとしても、ナショナル•チャンピオンの魔力に我を忘れないことが大切です。
特に高齢犬の場合、遺伝することを望まない、多くの悪癖を持っていながら訓練で作られた犬がいます。
このような犬で繁殖するよりも、どのように発達したか、仔犬の時に何に似ていたかを知っている、より若い犬で繁殖したほうがずっと良い結果を生みます。
牛の繁殖でも、より若い牡牛のほうが年をとった牡牛よりも輩出能力があるということは十分に証明されています。
種牡に関する限り、直仔の賞歴数にとらわれないでください。たくさんの入賞犬を排出したというのは、どのくらい多くの台牝に交配したかを知らない限り、さほど重要なことではありません。
昔、全国の半分の台牝と交配し、それによって素晴らしい生産得点(production score)を持つていたスパンキー•クリーク•ボーイのような犬たちがいました。
しかし、それは単なる数字でしかありません。彼は何㌫の確率で排出したのでしょうか?もしかしたら、三〇〇胎から一五〇頭の入賞犬を輩出したのかもしれませんが、私は一胎で三、四頭の良い犬を輩出する若い種牡を持つほうが好きです。
種牡にふさわしい若犬を見つけたら、種牡としての彼の能力を試すために、生後一年目で繁殖に使います
エルフユー•マークスマンが十三ヶ月から十四ヶ月齢の時にジャングルを生ませました。エルフュー•ストラィク、エルフユー•マグーも非常に若くして交配しました。
ちょうど今、エルフユー •スネークフットを二頭の台牝に交配しましたが、彼はたった十ヶ月齢です。来年までに彼が種牡としてふさわしいか分かるでしょう。
このように私たちは、常に自分たちのラインブリーディング•プログラムで非常に若い種牡を使ってきました。そして、私はそれが利点であると信じています。台牝も同じです。最所の発情で繁殖に使っています。
繁殖では、何かのために何かを犠牲にしなければならないという課題に直面します。私たちが繁殖の初期に直面したアンダーショットがそれです。
ジャングルはアンダーショットでした。しかし、彼は素晴らしい子犬を排出する能力を持った傑出した犬でした。
私たちはアンダーショットを繁殖し続けるのか、それとも素晴らしい彼らの能力を失うのかという選択に迫られました。
結局、私たちはアンダーショットを犬舎から削除しましたが、長い時間を要しました。
フックス•バウンテイー •ハンターとガード•レールの間もアンダーショットが現れました。種牡、台牝のいずれもがアンダーショットの遺伝子を持っているのです。アンダーショット、あるいはどんな劣性遺伝子でも、削除するための最も速い方法は、その遺伝子を持たない犬を選ぶことです。私たちの系統にレッド•ウォーター・レックスを入れた理由の一つに、彼が両親と同じ様に完璧な噛み会わせをしていたことがあります。

繁殖には能力の高い犬を使う

繁殖には「種の引きずり(the drag of the race)」と呼ばれる現象が現れます。繁殖を続けていくと、だんだんと「平凡なものに向かう」という現象です。もし、犬が人間の干渉なしに繁殖することを許されれば、いずれ彼らの共通の起源に逆戻りするでしょう。この現象はすべての繁殖に存在します。平凡な犬で繁殖するのではなく、できる限り傑出した犬で繁殖するという重要な理由がここにあります。繁殖用の種畜を選択する場合、トレール(相手犬の後を追いかけたり、相手犬や人の通った後をつけたりする行為)する犬は、どんな犠牲を払ってでも避けなければなりません。またポイント能やバッキング能の欠如した個体も避けるべきです。
この他にも、性格の弱いもの(softness)、忍耐力や気力の欠如、決断力不足、不安定な性格、敵意(繁殖用の犬では特に重大)、喜ばすことを嫌がる個体も避けます。犬は協力的になるべきです。彼らは思いやりのある、楽しい個性を持っているべきです。
避けるべき体構的特徴には、醜く見える頭部、悪い嚙み合わせ、悪い目と尾かあります。
完全な犬というのはパフォーマンスと個性、そして気質だけではなく、体構も含まれます。
現在、走る犬が流行しているようですが、私には大きな意味を持ちません。これは「僕の犬は君のの犬以上に走れるよ」という、若手革新派によって実行されたマッチョ•シンドロー厶の表れであると思います。
レンジ(最も遠くまで走れる犬)だけのために体構、猟能、ポイント能の素晴らしいことのすベてが犠牲になっています。これは体構あるいは被毛だけのために繁殖されたショードッグに起こったことです。もし、その犬が知能をフルに持って適切に繁殖されていれば、シューティング•ドッグあるいはオール・エージのどちらかで走るように訓練することかできます。その大が十分に頭が良ければ、自分が希望するどんな種類のトラィアルでも走れるように訓練することができます。繁殖で重要なことの一つに、若犬の中の環境的な特質から遺伝的なものを分離することが挙げられます。
これは良いことと悪いことの両方で、何が遺伝的な特性であるかを正確にに決定しなければなりません。子犬を調査することは非常に重要となります。グランド・パターンが遺伝であるとは信じ難いですが、スコットランドから訪れたブリーダーは「スコットランドのフィールドの特徴から、犬はほとんど焼き網タイプのパターンで走ることが要求されている。犬にも左利きと右利きがいる」と言うのです。かつて所有していたエルフユー•スコットランドという犬を見ていた私は「そうだ」と納得できる言葉でした。
繁殖に関する最新の考えの一つが、強い一族の重要性です。最近、ケンタッキー・ダービーとプリークネス•ステークスがありました。このレースで走ったほとんどの馬は、そこにいるための完璧な理論的理由がありました。クラシックホースが、極めて優れた良い血統の一族を除いた何かから現れることは非常に稀です。私は犬の場合も基本的には同じであると信じています。現在、私たちの犬舎にいる若いお気に入りの一頭がスネークフットです。彼は若いですが素晴らしい可能性を見せています。ダービーに三回出走して一席を二回、二席を一回獲得しました。おそらく私たちが持っている最高の血統です。
いずれレキシントン•ジェーク、そしてレッド•ウォーター•レックスやエアー•パイロット、ワーフープ•ジェークのよぅな偉大な犬たちと肩を並べる存在になると確信しています。
しかしながら、これは必ずしも繁殖が確実なものであることを意味しているわけではありません。どれだけ精緻な繁殖プログラムが開発されても、犬の繁殖には未知の部分か多くあるからです。
愛情表現が彼らにとってどれほど重要であるかは信じられないほどです。頭をポンポンと軽くたたくことさえ非常に意味のあるものになるかもしれません。あなたの思いやりを切望しています。彼らの気持ちを理解することも重要です。彼らは自ら不快なことを表現する方法がありません。「寒い」、「暑い」、「ものすごく窮屈だ」、「腹が減った」、「喉が渇いた」、「耳ダニやノミで気が狂いそうだ」、「疥癬でとてもとても苦しい」と大声で叫ぶことができません。
それでも彼らは、あなたが最も大切な存在であると、尾を振ってあなたを見ています。あなたと愛犬との問には相互尊敬と称賛、思いやりと献身、世話と保護という関係が存在します。
みなさんが訓練やトライアル、犬の繁殖で、大きな成功を収めることを祈ります。


米イリノイ州シカゴ市『アメリカン・フィールド』誌のご好意により掲載
  ( Coutesy of the American Field, Chicago, Illinois )

UpdateDate(C)2019/09/25